映画『飛べない鳥と優しいキツネ』感想



※2019年に公開された映画『飛べない鳥と優しいキツネ』感想です。

以下の文は公開初日と別日に2回行った後に書いたものです。


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今回、事前に前評判を読んだりもせず、予告動画を見る程度に留めて1/19公開初日に行ってきました。


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エレベーターも装飾されてました♪

 

前回の『グローリーデイ』は事前にほぼあらすじ(スホさんの演じるサンウくんの運命)を知った上で観たけどマジでトラウマになるレベルで泣いたので…
今回も…すぐ死んじゃう役や二時間の上映時間のうち出演がトータルで10分くらいだったらどうしよう…いや、それでもいいよね?!私?!って言い聞かせながら観たのですが、良い意味で裏切られました…😭💕
スホちゃんたくさん出番あった~!
しかもすごくすごく重要なキーパーソン!!
今までスホちゃんの演じた役(ドラマ含む)の中でこのジェヒ役が一番好きかもしれない…頭から離れない…
途中リアルに辛いシーン(いじめや家庭内DV)も多々あるのだけど、ラストに救いがあるストーリーなので多くの人たちに観てほしい、特に中高生は学校推薦にして皆で観に行ってもいいんじゃない?!って思いました。

そして何よりスクリーンに写し出される金髪スホちゃんの美しさ…!!

 

 

*以下、ネタバレ含むあらすじと感想です。

未見の方はご注意ください。


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主人公のミレ(キム・ファンヒちゃん)は中学生。学校で仲間外れにされ家では父親から暴力を振るわれ、居場所はオンラインゲームの中だけにしかない孤独な中学生。ゲームの中では勇者〝ダーク〟と名乗り、仲間も大勢いるしお姫様の〝ヒナ〟とも個人的な話もしている。

ある日、文章を書くことが得意なミレは学校の読書感想文で賞を取ったことがきっかけで、クラスメイトのテヤンくんと、クラス役員で美人で家も裕福なベッカプちゃんが興味を示してくれるようになる。
秘かに書き進めてた自作の小説に二人がそれぞれ興味を持ってくれ褒めてくれる。それを友情と受け取っていいのかな…と、戸惑いつつ現実生活に希望を持ち始めるミレ。特にテヤンくんへ淡い恋心を抱いていたから、テヤンくんの気さくなその優しさをを自分だけへの好意だとミレはちょっと勘違いしちゃうんだ。(途中のエピソードでもわかるんだけど、テヤンくんはマジでどんな子にも優しいんだ)
ベッカプちゃんはエリートの両親を持ち、男女問わず人気者で、全てにおいてミレとは対象的な存在なんだけど、やはり心に孤独や焦りを抱えていて、ミレとの友情が始まったと思ってた矢先、彼女のある行為をきっかけにクラスメイト全員巻き込みながらとんでもない方向へ向かってしまう。

それと平行して、唯一の居場所だったオンラインゲーム“ワンダーリング・ワールド”の配信が中止になるという知らせに ショックを受けるミレ。
次々とゲーム仲間が別のゲームへ移動しいなくなっていく中、〝ヒナ〟が『私に会いたくなったらここに来て』とメッセージを残してくれる。
勇気を出して現実のヒナに会いに行くミレ。
でも、女の子だと思ってた〝ヒナ〟は、自分より年上のジェヒという名の青年だった。(それがスホさん!)

一見飄々とした雰囲気の彼もまた、孤独な生い立ちと過去の取り返しのつかない過ちを抱えて傷つきながら生きていて、そんな二人の孤独な魂の出会いが物語を加速させる。

すぐに、ミレの自殺願望を見抜くジェヒ。
─俺も死にたいんだ。お前も死にたいなら遺書と死ぬ前にやりたいことリストを書け。それ全部やってから死ね。
って、物凄くあっさりと提案するジェヒ。
そして『やりたいことリストの中の一人ではできないことを手伝ってほしい』というジェヒの申し出に応じるミレ。
そこから二人の小さな冒険が始まる。
森の中でもない、魔物も魔法使いもいない、この現実の世界で、〝やりたいことリスト〟をクリアしていく二人。
たとえば、制限時間以内に巨大なピザを食べきるミッション。
たとえば、歯医者に行って(泣かずに)虫歯を治療するミッション。
遊園地で思い切り遊ぶミッション。
ジェヒのやりたかったことを一緒にクリアしていくミレ。
ミレの着ている服の色が最初黒っぽいものからだんだんと明るい色に変化していくのが、まるで彼女の心の変化のよう。

でも、現実はそうすんなりと上手くいかず、ミレはテヤンへの失恋やベッカプの裏切りを経験し、更に担任の教師からさえ事実をねじ曲げられる。どこにも正義は存在しない。自分を必要としてくれる人なんてこの世界にはいない。
けれど、ジェヒに自殺する覚悟があるなら死ぬ気で行動してからにしろ、と言われて動いたことにより、ミレが望んだわけではないのだが、結果的にミレとベッカプの立場が逆転し今度はベッカプがいじめの標的になってしまう。
そこに加担する者、見てみぬ振りする者。大人は己の保身ばかり。
悩みつつも、ミレは『人は誰でも間違うし、そこから変わることもできる』と自ら発言し、ベッカプを許す。それってどんな冒険より勇気のある決断だと思った。そんなミレにとても共感したし希望を貰った。

しかし、そこですんなりと終わらず、一波乱あるのは、ミレのそれまでの心の中の嵐(葛藤)を現しているようだと私は思えた。
言葉だけで納得できるほど、軽くはないのだ、彼女が受けた心の傷は。
心理学者の河合隼雄さんが、思春期における心の葛藤を『真に癒されるには、一歩間違えれば自身の命が失われるような凄まじい(心の)体験が必要となる』と言っている。
まさにミレの取った行動はそれであり、またそこから助かったのも〝心の体験〟とすれば納得がいく。

ジェヒは、そんなミレを絶妙な距離感を保ちつつも理解する唯一の人物だ。
ミレは彼の抱えた孤独や心の傷に直接手を差しのべるにはまだ幼すぎるのだけど、本能でそれらを理解している。
お互い最後まで馴れ合わず、それでもかけがえのない存在になっていく過程がこちらにひしひしと伝わって泣いてしまった。

終盤、ジェヒの心を縛ってきたもの(自身の過去の過ち)と向き合う場面があるのだけれど、それが唯一彼の感情の発露であるゆえに、その表情が切なくて…
スホさんの演技に引き込まれ泣いた…;;
もちろん、名子役だったミレ役のファンヒちゃんの演技は自然で素晴らしかった。
アラスカの大学に行くからもう会えないかもな、って言うジェヒを笑顔で見送るミレ。
後で読め、と渡された手紙を人気のない場所で開いた途端、感情を爆発させたところではこちらももらい泣き…;;
それまで彼女は無表情だったし泣かなかった。
どんなにクラスメイトから意地悪されても父親から殴られても酷い言葉を浴びせられても教師から理不尽なことを言われても、自分が傷ついてないふりをすることでなんとか自分の心を守っていたんだ。

手紙には、たった一言、
『泣いてもいいんだよ ヒナより❤』
と書かれていた。

その手紙を胸に大声で泣くミレ。

悲しい時は大声で泣いてもいいんだ。

たったそれだけの真実。

それが手形になって、ミレは現実世界と和解したんだね…。


ラスト、高校生になったミレが友だちからの遊びの誘いを先約があると断る場面で、男の子?って冷やかしに『違う~!…〝ヒナ〟』って答える所で物語は終わるんだけど、それはジェヒがアラスカから戻ってきたってことかな?それとも、また何か別のオンラインゲームで昔のハンドルネームで落ち会ってるのかな…と、見る側に委ねる終わり方も爽やかで良かったかな、と思いました。

余談ですが、
ただ、ミレの母親との関係が少しわかりずらかったかな…味方ではあるけれど、父親の暴力や搾取からミレを守りきれてはない存在なのかな?とは思ったけれど、少しそこが歯痒かった。

そして、あのゲームの中の登場人物である巨人が現実世界に出現してミレを助けた場面はご都合主義という評もあるかもしれないけれど、巨人がゲーム世界では助けられなかった〝ダーク〟を助けに来たのだ、とも思える。あの場にいる皆には巨人は見えていなかったようなので、あそこを場所移動はさせず木のクッションに上手く着地する演出だったら違和感なく見れたかもしれないが、永遠にゲームの中で彷徨う巨人なりの決別として必要な演出だったのかもしれない。

 

私にとっては2回見ても色々考えさせられ、スホさんの美しさを引きずる中毒性のある映画でした!
パンフレット無かったのが本当に悔やまれる!
あんなスホさんやこんなスホさん、現実離れした美しいスホさんを残してほしかった〜!

※後日、DVDが出たので無事購入し一時停止しまくりながら鑑賞しました(◡ ω ◡)

 

6/28〜Gyao! にて無料公開されます!この機会にぜひ!

予告動画

https://youtu.be/b-AKATyhNQY